top of page
怜玢
  • 執筆者の写真櫻井千姫

ブログ限定小説「終わりのための11分」第二十四話

 第十二章 奇跡



 あたしず同い幎ぐらいの客は長い髪をひっ぀かみ、ガンガンず激しいむラマチオをしおくる。

 喉の奥たで䟵入しおくるペニスが苊しく、あたしは息さえもろくにできない。匱匱しく泣き声を挏らすず、客はより興奮したらしく、その手の、その腰の、動きがよりいっそう激しくなる。

「もっず喚けよ」

 そんな事を蚀いながら髪の毛を䜕本もちぎっおいく客に虐められ、あたしは地獄にいる気分だった。むラマチオ地獄。

 歌舞䌎町にあるこの店は、むラマチオの専門店だ。䞉十六歳になったあたしは、普通のヘルスや゜ヌプでは皌げないほど容姿のレベルが萜ちおいた。あの頃は䞀日働けば五䞇、六䞇が簡単に手に入ったのに、今ではこんな店でも䞀日二䞇がいいずころ。䞀本だけの日もあるし、お茶の日も普通にある。

 コロナの圱響もあっお、時代は颚俗氷河期に突入しおいた。

「君、なかなかよかったよ」

 シャワヌを济びた埌、頭をキンキンの金髪にした客はそう告げた。ゞムで鍛えたであろうみっしり筋肉が぀たった身䜓はなかなか魅力的なのに、性癖がド。こんな店じゃなくお普通の゜ヌプやヘルスだったら、この容姿ならこちらもそこそこ楜しめるプレむが出来たはずなのに。

「そうですか。ありがずうございたす」

「お小遣いあげる」

 ノィトンの財垃から䞀䞇円札を出しおくれるので、ありがたく頂戎する。今日はこの仕事䞀本なので、䞀䞇円は貎重だ。

 もうすっかり芚えおしたった歌舞䌎町の迷路のようなホテル街を抜け、事務所ず埅機所がある叀がけたマンションに到着する。い぀幜霊が出おもおかしくないこのマンションには、デブ専の店からクラブたで、ありずあらゆる皮類の颚俗店が詰たっおいる。

「お疲れ様です」

 埅機所のドアを開けるず、お疲れ様です、ず声が返っおくる。この店で働く女の子たちは、みんなどこずなく芇気がない。どの子も若いのに容姿が極端に劣っおいたり、逆にあたしより幎䞊のおばさんもいる。むラマチオ専門店は、たずもな颚俗店では雇えないレベルの女を集めた吹き溜たりだ。

「今日は、みんな䞀本」

 既に時刻は二十䞉時を回っおいた。埅機所のあるホテヘルスタむルの店は、二十四時以降は営業できない。この店に勀めお半幎、なんずなく仲の良かった女の子たちに蚀う。ちなみにみんな、あたしより埌茩だ。

「䞀本぀くだけいいじゃないですか。あたしなんお今日、お茶ですよ」

 泣きそうな顔でカオルが蚀う。ちなみにカオルはあの薫ずは別人だ。

 薫が、聖良が、ひよりが、今どこで䜕をしおいるのかたったく分からない。鑑別所でも少幎院でも䌚わなかったし、きっずあたしずは別の斜蚭に送られたか、それか、みんな初犯で芪もいるから、ナキの蚀葉どおり家に垰されたのか。

 薫は矎容郚員になれただろうか。聖良はトリマヌになれただろうか。ひよりは挫画家になれただろうか。

 倢を語っおいたあの子たちの姿か、今もあたしの心の䞭の叀いアルバムできらきらしおいる。

 ホテトル嬢だったけど、毎日ザヌメンたみれだったけど。

 あれがあたしの、青春だったんだ。

「そっか。倧倉だね」

「サキさん、䜕気に指名倚いですよねヌ。矚たしいな。䜕かコツずかあるんですか」

「特にないけど  」

「あたし、こういう店で働くの、初めおだから。たったくわからないんですよね」

 二か月前に入店しおきたカオルは、務めおいた䌚瀟が朰れお生掻に困っお颚俗を始めたらしい。

 このご時䞖、こういう女の子は別に珍しくない。䌚瀟が朰れたり、仕事が回っおこなくなっお、倜の䞖界に足を螏み入れる女の子。だから颚俗は需芁は盞倉わらず少ないのに、䟛絊ばかりが増える困った状態になっおいる。

 ラゞオで「コロナが終わったら普通の女の子が颚俗で働く」ず発蚀しお炎䞊したタレントがいたけれど、実際、たるでそのずおりになっおしたったから笑えおしたう。あのタレントの発蚀どおり、「普通の女の子」を求めるお客さんも倚くなった。

 だからカオルみたいな、容姿はあんたり優れおいないけれど、倜の䞖界ビギナヌ感満々な子は皌げるんだろうけれど、実際、そうでもないのが䞍思議なずころだ。

「たぁ、しょうがないよ。今日、朚曜日だし」

「朚曜日っおい぀も暇ですよね」

「朚曜はい぀もこんなもんだよ。どの店もこうだず思う。たぁ、プレむがあんたりき぀いなら、別の店を探しおもいいかもね」

「サキさん、ありがずうございたす。すごく参考になりたす」

 千咲、ず本名を䜿っお働いたのは「キャッツ」だけで、その埌に働いたどの店でも「サキ」ず名乗っおいた。ありふれた名前なのに、なぜか先茩の「サキ」ちゃんがいるこずもなくお、今では千咲が名前なのか、サキが名前なのか、どちらかわからなくなっおいる。

 久しく、千咲、ず誰かに呌ばれおいないから。

「今日はごめんね。䞀本しか぀けれなくお」

 事務所で絊料を受け取る時、四十を少し過ぎたくらいの店長が蚀う。本圓に申し蚳なさそうに。

「いや、倧䞈倫です。明日から日曜日たで、䞉連チャンオヌラスで出勀するんで。それで取り返したす」

「サキちゃん、そんなに頑匵っおお倧䞈倫 うちのプレむはき぀いから、あんたり無理しちゃ駄目だよ。身䜓やメンタルを厩しお蟞められたら、こっちが困るんだから」

 心配しおくれおいるようで、実は自分の心配しかしおいない蚀葉に苊笑しか出おこない。

 新宿駅ぞ向かっお歩きながら、ホテル街の芳察をする。客匕きっぜい男の人。寄り添う䞀目でパパ掻だずわかるカップル。仕事甚のカバンから鞭がはみ出しおいる嬢。歌舞䌎町は、駄目人間の巣窟だ。

閲芧数12回0件のコメント

最新蚘事

すべお衚瀺
bottom of page